以前、他業者での施工後に、“決めた色と同じ色にならなかった。だけど塗装業者からは同じ色を使ったと言われた”と色に関する内容のご相談をお受けした事があります。 外壁塗装工事で、お施主様が悩み、トラブルの原因になる事がある1つは外壁の色の選択になります。

 

今までと同じ色にしようと決めておられる方、あの家のような色にしたいと希望される方、どんな色が良いでしょうか?とご相談される方等、本当に外壁の色選びは様々です。一度塗ったら、次の塗り替えまでは約10年は同じ色になってしまいますので、出来れば、満足いく色を塗装しておきたいものです。

 

冒頭のように、ちゃんと決めて指定した色にならなかった原因はどこにあるのでしょうか。

同じ様な思いをしない為にも、まずは「色がどうしてその色に見えるのか?」から解決していきましょう。それでは、色の原理や法則と色を選ぶ時のポイントをご紹介していきたいと思います。

 

色を感じさせる可視光線

可視光線とは電磁波のうち人の目で見える波長の事を言います。簡単にいうと太陽光の目に見える部分の事です。私達の目は光の波長の長さで色を認識出来るのですが、認識出来る波長は短いものから紫、藍、青、緑、黄、橙、赤で、いわゆる虹色と言われる7色までです。紫より短い波長のものは紫外線、赤より長いものは赤外線と呼ばれ、人の目では認識できません。

光源色と物体色

人が光を受けて認識出来る色は、大きく分けて2つに分けられます。光源が発する電磁波の中でどの波長が多く含まれているかで見える光源色。光源から光を受けた物体が見える物体色。この物体色は更に2つに分けられます。物体の表面に反射して発色する表面色、半透明の物質を透過して見える透過色。言葉で説明すると分かりにくいので、図にすると下記のようになります。

ちなみに塗料や塗膜の色は物体色になります。

 

光源の種類によって見え方が変わる

色は光を受けて認識する事が出来ます。その光は太陽光、ローソクや白熱電球等の熱放射型光源、蛍光灯、LED等の種類があります。例えば、お店で見て気に入ったお洋服が、実際に着用して出かけてみると違った色に見えた事はないですか?それはお店で見た時と着用して出かけた時の光源の違いが引き起こす分光反射率、つまり店内の照明と太陽光の波長が違う為に引き起こる現象なのです。

 

色とは、光源の特性として光の分布、そして物体の特性である反射率や透過率と吸収率と眼の組み合わせで見え方が変わってくるのです。ちょっと難しく感じてしまいますが、ここでは、同じ物でも条件により色の見え方が変わるというポイントだけ覚えておいてください。

 

色の分類

 

次は色そのものの基本的な事についてご紹介致します。少し戻りますが、光源色と物体色にはそれぞれ原色があります。

 

【光源の原色】

光の原色は可視光線の中の短波長域の、中波長域の、長波長域のの光に分けられ、この3色を光の三原色といいます。光の場合は全ての波長域を混ぜ合せた光は白に見えます。

【色材の原色】

色材の原色は赤・黄・青でこの3色を色の三原色といいます。赤と黄を混ぜると橙色、青と赤を混ぜると紫色、黄と青を混ぜると緑色になりますが、三原色を混ぜ合わせると黒になります。

色材色は、赤・黄・青などの彩りを持つ有彩色と、白、グレー、黒のように彩りを持たない無彩色に区別できます。

 

【色の三属性】

更に色には色相、明度、彩度という3つの要素があります。これを色の三属性といいます。無彩色には明度だけしかありません。

図にすると下記のようになります。

※HUE/360(https://hue360.herokuapp.com/)図参照。

 

さてここまででは、色の基礎知識をご紹介してきました。これからやっと本題である外壁塗装の色選びの時に直接関係してくる内容に進みたいと思います。

 

色の持つイメージや特徴を考慮した塗料の選び方

(財)日本色彩研究所で、色彩調和を主な目的としてPCCS(日本色研配色体系システム)が開発されました。色を色相とトーンの二次元で分類している事が最大の特徴です。

 

トーンとは?

色の明暗・濃淡・強調などの色の調子で、明度と彩度の複合概念の事

 

以前は色相の違いから受けるイメージで色を評価していたのですが、色のイメージは色相よりもトーンの影響を受ける方が大きい事が分かりました。トーンが同じ色であれば色相が変わってもイメージは共通し、色相が同じでもトーンが変わるとイメージが変わるのです。ですので、色を決める際はトーン区分をつかうと上手な配色が可能になります。

下記表はトーンとトーンが持つイメージをまとめています。外壁塗装だけでなく、内装の塗装、壁紙、カーテン、家具等を選ぶときにも引用してみてください。

 

トーン トーンの持つイメージ
p pale 清らかな   軽い       女性的な
lt light 明るい    爽やかな     軽やかな
b bright 陽気な    華やかな     楽しい
v vivid さえた    鮮やかな     派手な
st strong 強い     動的な     情熱的な
dp deep 深い     濃い      コクのある
dk dark 安定した   暗い      円熟した
sf soft 柔らかな   穏やかな    温和な
d dull 渋い     くすんだ    鈍い
ltg light grayish エレガントな 繊細な     おとなしい
g grayish 濁った    地味な     落ち着いた
dkg dark grayish 陰気な    重い      男性的な
W white 清潔な    冷たい     新鮮な
Gy gray スモーキーな しゃれた    寂しい
Bk black 高級な    フォーマルな  固い

 

色選びのポイント!                                                                                       

色相よりもトーンを合わせた色を選びましょう

彩度の高い色は色あせしやすいので注意が必要

純白や漆黒などは汚れが目立ちやすいので、少し明度を抑えた白系、少し白みがかった黒系を選ぶ、又は、汚れにくい塗料や劣化しにくい塗料を選びましょう

 

 

色の見え方の違いを考慮した選び方

光源の項目では同じ物でも条件により色の見え方が変わるとご説明しましたが、色の面積や組み合わせ等によっても色の見え方が変わってきます。

 

①面積の違いで起こる色の違い

下記の図は同じ色ですが、小さくなると暗く彩度が低くみえます。

色選びのポイント!

  • 外壁塗装の色を選ぶ時は大きめの色見本(A4サイズ)で見ましょう
  • 小さめの色見本で選ぶ時は、イメージしている色よりも彩度と明度を下げて選びましょう
  • 外壁に使うものなので、太陽光の元で朝、昼、夕方と時間を変えて見本の色を確認しましょう

 

パソコンでシュミレーションした場合、大まかなイメージは掴めますが、実際には色の誤差がでます。これは色の見え方の作用とパソコンの色の表現方法や印刷時の色の表現方法の違いからくるものです。

 

②背景の違いで起こる色の違い

背景の色は明度の差がある方がはっきり見えます。下記図のようにグレーよりも黒の背景の方が色ははっきりみえます。

又、色相の差があるとはっきりと見えます。下記図のように同じオレンジ色でも、背景が赤の場合と緑の場合では、緑の背景の方が、オレンジ色がハッキリと見えます。これは色相の差がもたらす見え方の効果です。

色選びのポイント!                              

  • 玄関やサッシ等の塗装をしない箇所と外壁の色の組み合わせも一緒に考えておきましょう
  • 付帯部の色も外壁の色との組み合わせも一緒に考えておきましょう
  • 周りの街並みや樹木等も背景の1つです。完成したイメージは周りの背景も一緒にイメージしておきましょう

 

③見る人による色の違い

同じ物を同じ条件で見たとしても、見える色には差が出る事があります。それは以下の原因があげられます。

 

・人間の目の感度には個人差がある

・正常な色覚の人でも、赤色と青色にわずかに感度が偏っている

・年齢とともに視力も変化する

 

色選びのポイント!

  • お施主様のご家族全員が見本を見て、見本の色番号で決めましょう

※塗料メーカーのパンフレットに掲載されている色はよく選ばれる色となっています。

 

 

その他考慮が必要な色の選び方

色選びは本来自由なのですが、周りとの調和や色の性質等を考えれば、好みの色が家の色に似合うとは限りません。又、法律で定められている事、塗料の性質と光の作用によって変化して見えるもの等がありますので、ここではそれらをご紹介していきたいと思います。

 

色選びのポイント!

  • 景観法の適用地区

景観法は景観に関わる日本の法律です。景観法の地区は建築物のデザインや色、高さなどを多岐にわたり規制されます。お住いの地区が景観法の適用地区の場合は使えない色等の制限があります。地元の塗装業者でしたら、把握しているとは思いますが、一度ご自身でもご確認してみてください。

 

  • 外壁の種類や艶の有無でも色は変化して見えます。

凹凸がある壁の場合、影が影響して色が濃く見える事があります。希望する色よりも少し明度を上げる事で仕上がりは(見え方)は希望に近くなります。

 

つや消し塗料の場合、艶有り塗料に比べて同じ色でも白っぽい仕上がりになります。艶の有無でも選んだ色の通りに見えない事がありますので、それを考慮した色を選びましょう。

 

  • 周りとの調和を考える

色そのものを選ぶ等ではなく、周辺環境への調和を考慮しながら色をまとめていく作業を色彩設計といいます。色彩設計では、地域性、地区性、美観性、環境性等、それぞれに合った配色や色彩を選ぶ事で、周りとの調和が保てます。

 

  • 建物とイメージを合わせる

例えば、純日本建築仕様の建物にヨーロピアン調の色味を選んでも似合いません。大きなイメージチェンジをしたい場合は、外観のリフォーム工事も視野に入れておいてください。

 

色選びポイントまとめ

  • 色相よりもトーンを合わせた色を選びましょう
  • 彩度の高い色は色あせしやすいので注意が必要です
  • 純白や漆黒などは汚れが目立ちやすいので、少し明度を抑えた白系、少し白みがかった黒系を選ぶ、又は、汚れにくい塗料や劣化しにくい塗料を選びましょう
  • 外壁塗装の色を選ぶ時は大きめの色見本(A4サイズ)で見ましょう
  • 小さめの色見本で選ぶ時は、イメージしている色よりも彩度と明度を下げて選びましょう
  • 外壁に使うものなので、太陽光の元で朝、昼、夕方と時間を変えて見本の色を確認しましょう
  • 玄関やサッシ等の塗装をしない箇所と外壁の色の組み合わせも一緒に考えておきましょう
  • 付帯部の色も外壁の色との組み合わせも一緒に考えておきましょう
  • 周りの街並みや樹木等も背景の1つです。完成したイメージは周りの背景も一緒にイメージしておきましょう
  • お施主様のご家族全員が見本を見て、見本の色番号で決めましょう

※塗料メーカーのパンフレットに掲載されている色はよく選ばれる色となっています。

  • 景観法の適用地区の確認をしておく
  • 外壁の種類や艶の有無でも色は変化する事を考えておく
  • 周りとの調和を考える
  • 建物とイメージを合わせる

 

 

如何でしたか?かなり難しい事もご紹介してきましたが、色の性質を知っておく事で、選んだ時と施工後の誤差を少なくする事が出来ます。塗料の性能や性質だけでなく、外壁の色でも満足出来る塗装工事にして頂く為にご参考にしていただけましたら幸いです。